IPOの全体の流れの中で終盤に行う手続が「購入申込」です。証券会社によっては「購入意思表示」と表現しているところもあります。
IPOではブックビルディングに主眼が置かれがちですが、この購入申込も非常に重要な手続なのでしっかりとチェックしておきましょう。
また、複数の口座からIPOに申し込む場合や複数のIPOが同時期に集中している場合には、購入申込を忘れてしまいやすいので注意してください。
では、「購入申込」の手続について見ていきましょう。実際の手続の流れやキャンセルは可能なのか?などの疑問点についても触れているので、併せてチェックしてくださいね。
「購入申込」はIPO株をGETする為の必須手続
IPOではどの証券会社も「抽選申込(ブックビルディング)」と「購入申込」の2段階の申込方式を採用しています。
2つの申込を簡単に表現すると以下のようになります。
- 抽選申込・・・抽選参加の意思表示
- 購入申込・・・購入の意思表示
そのため、抽選申込だけではただ単に「抽選に参加します!」と手を挙げただけに過ぎません。IPO株をGETするには、抽選に参加した上で、「買います!」と購入の意思表示である購入申込をする必要があります。忘れずに行うようにしましょう。
後期型の証券会社は購入申込を忘れやすいので特に注意
証券会社は、IPOの手続の流れの違いによって「前期型」と「後期型」に分けられます。このうち、後期型の証券会社では「購入申込」を忘れやすいので注意が必要です。
- 前期型・・・購入申込前に抽選を行う証券会社
- 後期型・・・購入申込後に抽選を行う証券会社
「前期型」と「後期型」の手続のフローを図にすると以下のようになります。
このように、後期型では抽選結果が出る前に購入申込を済ませる、という特殊な流れになっているんですね。また、後期型の証券会社自体が少なく、特殊な手続のフローになかなか慣れないのも購入申込を忘れてしまう要因かもしれません。
そのため後期型の証券会社からIPOに申し込む際は、「購入申込期間って終了してたの!?」とならないように注意してくださいね。
ちなみに、後期型の証券会社は以下の4社です。
- カブドットコム証券
- 楽天証券
- 岩井コスモ証券
- GMOクリック証券
もちろん、前期型の証券会社でも購入申込を忘れる可能性はあります。ただ多くの証券会社では当選通知メールが送信され、そのメールには当選結果と共に「購入申込が必要ですよ」と記載されているので、忘れにくいシステムになっています。
購入申込を忘れてしまうと・・・
前期型と後期型では手続の流れの違いから購入申込を行う人は、以下のようになります。
- 前期型・・・当選者及び補欠当選者
- 後期型・・・抽選申込者全員
もし購入申込を忘れてしまったらそれぞれどうなるのか?というと、前期型では当選又は補欠当選が無効になり、後期型では抽選対象外になってしまいます。
いずれにしてもIPO株の購入チャンスをフイにしてしまうので、必ず購入申込を行うようにしましょう。
なお、補欠当選をした際に購入申込をするかどうかの判断ポイントについては、以下の記事を参考にしてください。
購入申込を行う時期は前期型も後期型も同じ!まとめてやってしまおう
前期型と後期型の証券会社では「抽選」のタイミングにズレがありますが、実は購入申込を行う時期・期間は基本的に同じなんです(期間が短い証券会社もあります)。
たとえば、2018年4月27日に上場した株式会社エヌリンクス(コード:6578、市場:JQS)では、以下のように購入申込期間が前期型と後期型でほぼ同じ設定になっています。
- みすほ証券(前期型)・・・4月20日~4月25日
- 岩井コスモ証券(後期型)・・・4月20日~4月24日
そのため、購入申込期間が開始されたら、前期型・後期型関係なく、購入申込をまとめて行いましょう。
ちなみに、購入申込手続が可能になるのは、前期型の証券会社の抽選が終わってから1日・2日後です。
【実例】IPOの購入申込手続の流れ・方法
では、実際に購入申込をどのように進めていくのかを「楽天証券」を例にして紹介します。ログインしてIPO銘柄一覧ページに移動した後から見ていきますね。
【STEP1】目論見書をチェック
まずは取引銘柄一覧の目論見書の欄にある「閲覧」をクリックして、その内容をチェックします。
ブックビルディングを申し込む際に目論見書をチェックしていると思いますが、その時点では未定だった事項(公開価格やオーバーアロットメントの内容など)や変更があった事項について目論見書訂正分が公開されているので、確認しておきましょう。
【STEP2】手続を行う銘柄欄の「申込」をクリック
続いて、購入申込欄の「申込」をクリックします。
【STEP3】口座を選択
口座区分(特定口座か一般口座)を選択して「確認」をクリックします。
特定口座を開設している人は「特定口座」を選択しておけば良いでしょう。なお特定口座を選択しても、その後確定申告をする事で他の証券口座で発生した譲渡損益と通算する事が可能です。
【STEP4】内容を確認して取引暗証番号を入力
購入申込内容を確認し、「取引暗証番号」を入力して「購入申込」をクリックします。
【STEP5】銘柄一覧画面で「申込済」となっているのを確認して完了
【STEP4】で購入申込手続は完了ですが、念の為、取引銘柄一覧画面で手続を行った銘柄の購入申込欄が「申込済」となっている事を確認します。
以上が楽天証券における「購入申込手続」です。目論見書をチェックする時間を除けば、1分もかからないので忘れずに行ってくださいね。
購入申込においてキャンセル・辞退は可能?
抽選に申し込んだ後、ワクワクした気分とは裏腹に「公募割れするかも?」という不安が募る事もあります。もしそういった場合にはキャンセルできるのでしょうか?
結論から言うと、キャンセルは可能です。正式な言い方をすると「購入辞退」となります。
ほとんどの証券会社では、取扱銘柄一覧画面に「購入申込」と「購入辞退」のボタンが表示されるので、「購入辞退」をクリックすればOKです。内容を確認して実行すれば、無事キャンセルする事ができます。
このように、IPOの抽選に参加又は当選したら必ず株式を購入しなければならないわけではないので安心してください。
ただし、「購入申込」若しくは「購入辞退」の意思表示は1回のみとしている証券会社がほとんどです。つまり、意思表示の再変更はできない場合が多いです。そのため、「購入申込」と「購入辞退」の手続を行う時は慎重に判断してください。
また、購入辞退(申込忘れや資金不足も含む)をするとペナルティを課す証券会社もあるので注意が必要です。
キャンセル前にペナルティの有無は要チェック!
IPOのキャンセル・購入辞退に対してペナルティを課す証券会社を紹介しておきますね。調べた限り、以下の4社しか無かったので覚えておきましょう。
- SMBC日興証券
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券
- 岡三証券*
- 東洋証券
なお、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券及び東洋証券では「補欠当選者・次点者」の購入辞退等についてペナルティを課す事はありませんが、岡三証券では購入申込前に行われる購入意思確認で購入意思を示した補欠当選者が購入辞退等をするとペナルティが課されるので注意してください(電話で抽選申込をした人のみ補欠当選の対象)。
では、各社のペナルティの内容について見ていきましょう。
■SMBC日興証券のペナルティ
- 購入申込期間の最終日から1ヶ月間、新たなブックビルディングの参加不可
- その他のIPO銘柄で参加しているブックビルディングが無効(購入申込をしている銘柄は取り消されません)
■三菱UFJモルガン・スタンレー証券のペナルティ
- 購入辞退をした日から1ヶ月間、ブックビルディングの参加不可
- その他のIPO銘柄で参加しているブックビルディングが無効(当選している銘柄は取り消されません)
■岡三証券のペナルティ
- 購入辞退以降のオンライントレードの利用した申込が不可
■東洋証券のペナルティ
- 購入辞退をした日から1ヶ月間、ブックビルディングの参加不可
- その他のIPO銘柄で参加しているブックビルディングが無効(当選している銘柄は取り消されません)
三菱UFJモルガン・スタンレー証券と岡三証券はあくまで「ペナルティを課す可能性がある」という曖昧な表現ですが、ペナルティをくらうと考えておいた方が良いでしょう。ちなみに、SMBC日興証券は確実にペナルティーが課されます。
4社とも主幹事・幹事を数多く務める証券会社なので、ペナルティを課されるのは避けたいところです。
そのため、購入申込を忘れる事が無いようにIPOのスケジュール管理をきちんとし、また公募割れを起こすリスクについてはブックビルディングの申込時点でしっかりと分析するようにしましょう。
まとめ~購入申込も食事のように~
朝起きたら「朝ご飯」、昼になったら「昼ご飯」、夜には「晩ごはん」。
このように普段の生活の中では、その時が来たら食事を取りますよね。忙しくて食事を飛ばす事はあっても、食事をする事を忘れていた!?という人はいないはずです。
購入申込も食事のように購入申込期間が到来したら手続を済ませる習慣を身に付けていきましょう。
もちろん今回紹介したように、公募割れのリスクがある場合は購入申込を辞退する事も可能です。ただし、証券会社によってはペナルティが発生する事もあります。またペナルティが無かったとしても、資金が拘束される事によって、投資機会を失ってしまう事になります。
食事をする時もメニューを吟味したり、食材を入念にチェックしますよね。IPOでもキャンセルする自体を招かないように、抽選に申し込む時点でしっかりとその銘柄について分析するようにしましょう。