上場中止(延期)の理由は?再びIPOに挑戦したら初値はどうなる?

CANCELEDと書かれたプラカードをそれを掲げるスーツを着た人の腕

証券取引所の上場承認を受けたとしても、全ての銘柄が無事に上場日を迎えられるわけではありません。年に数銘柄は承認後に上場を中止(延期)しているんです。

証券取引所が行う厳しい審査をクリアし、上場日まで残り1ヶ月を切ったにもかかわらず、上場を中止・・・。

なぜ!?

投資家からすると、これが率直な感想でしょう。この期に及んで上場を中止するなんてちょっと考えられませんよね。ましてや承認取消が発表されるタイミングが当選後だったら・・・「なぜだー!」と叫びたくなるでしょう。

そこで今回は、上場承認後にIPOを中止(延期)する理由や過去の事例について紹介していきます。またIPOを中止した企業が、再度挑戦する際にどういった初値になるのか?についても過去の事例を交えて紹介します。

上場を中止(延期)する理由は主に3つ

3と記載された旗

上場を中止(延期)する理由は主に以下の3つです。

上場を中止(延期)する理由
  1. 内部統制の問題
  2. 業績予測の変化
  3. 市場の急激な変化

過去に上場を中止した銘柄を見ていくと、上記のいずれかを理由として上場中止の判断をしている事が分かります。

各銘柄の上場中止理由は、ホームページのプレスリリースなどで公表されます。たとえば、株式会社パデコだと以下のような感じですね。

株式会社パデコの上場中止に関するプレスリリース(出典:株式会社パデコ「プレスリリース」

どの企業も同じですが、上記の画像のような具体性に欠ける内容となっています。どこに、どんな問題が有ったのか?という点については記載されません。

ま、どんな理由であれIPOハンターの我々からすると、上場中止になるというのは残念なことです。せっかくのIPOの機会が減るわけですから・・・。

ちなみに、上場を中止した複数の企業に「具体的な理由」について問い合わせてみましたが、「プレスリリースに記載された以上の事は答えられない」という回答ばかりでした。(大きな声では言えませんが、反◯社会的◯勢力が関わっていた!なんてことで中止になる場合もあるとかないとか・・・)

上場中止が発表されるタイミング

上場延期・中止が発表されるタイミングは、「ブックビルディング前」か「ブックビルディング期間中」となることがほとんどですが、過去には抽選結果後に中止が発表された事例もあります。

当選した方は、どれほどショックを受けたことでしょう。勘弁して欲しい話ですね。

上場中止をしたIPO銘柄一覧(2016年~2018年)

さて、ここまでの話を聞くと「どこの会社が上場中止してるの?」と気になりますよね。そこで、2016年~2018年(10月15日時点)において上場中止・延期を発表した銘柄を一覧で紹介します。

企業
2018年株式会社テノ.ホールディングス
株式会社パデコ
株式会社インバウンドテック
世紀株式会社
2017年株式会社アトリエはるか
株式会社エスキュービズム
2016年株式会社ZMP
株式会社オークネット

では、それぞれの銘柄について上場中止・延期事例を簡単に紹介していきます。

なお、各銘柄の上場中止理由はプレスリリースの文言をそのまま引用しています。

株式会社テノ.ホールディングス(7037)

  • 予定されていた上場日:2018年9月20日
  • 上場中止の理由:コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」について確認すべき事項が生じたため
  • 中止が発表されたタイミング:抽選後(上場日の2日前)

株式会社パデコ(7032)

  • 予定されていた上場日:2018年6月28日
  • 上場中止の理由:内部管理体制に確認すべき事項が発生したため
  • 中止が発表されたタイミング:ブックビルディング前

株式会社インバウンドテック(7031)

  • 予定されていた上場日:2018年6月27日
  • 上場中止の理由:確認すべき事項が発生したため
  • 中止が発表されたタイミング:抽選後(上場日の5日前)

世紀株式会社(6234)

  • 予定されていた上場日:2018年2月8日
  • 上場中止の理由:社内規定に照らし確認すべき事項が発生したため
  • 中止が発表されたタイミング:ブックビルディング前

株式会社アトリエはるか(6559)

  • 予定されていた上場日:2017年12月7日
  • 上場中止の理由:コンプライアンス(法令順守)に関して確認すべき事項が発生したため
  • 中止が発表されたタイミング:抽選後(上場日の2日前)

株式会社エスキュービズム(3982)

  • 予定されていた上場日:2017年3月22日
  • 上場中止の理由:確認すべき事項が発生したため
  • 中止が発表されたタイミング:公開価格決定日

株式会社ZMP(7316)

  • 予定されていた上場日:2016年12月19日
  • 上場中止の理由:顧客の個人情報が流出した問題を受け、社内体制を見直すため
  • 中止が発表されたタイミング:ブックビルディング最終日

株式会社オークネット(3964)

  • 予定されていた上場日:2016年9月30日
  • 上場中止の理由:最近の株式市場の動向等諸般の情勢
  • 中止が発表されたタイミング:ブックビルディング前

いかがでしょうか。中止理由についての表現は各社様々ですが、大枠は前述した3つのどれかに該当します。ただインバウンドテックのように「確認すべき事項の発生」という抽象的すぎて全く分からない銘柄もありますが・・・。

もう1つ注目していただきたいことが、上場中止を発表するタイミングです。さきほども紹介したように、抽選後という悲惨なタイミングでの中止事例がここ3年間だけでも8件中3件発生しています。

ここで気になるのが、投資家への対応です。特に当選していた場合には何かしらの補償は無いのか?と気になりますよね。

そこで続いては、申し込んでいたIPOが上場中止・延期となった場合に投資家はどうなるのか、についてお話していきます。

IPOが取り消されたら投資家はどうなる?

絶望に顔を覆い座り込む女性

「IPOが取り消されたら、せっかく申し込んでたのに全部帳消しになるの?」
「何か補償とかしてくれないの?抽選までいって、せっかく当選したのに!」

残念ながら、申し込んでいたIPOが取消となっても、基本的に投資家への対応は無いと考えるべきでしょう。証券会社の営業担当者による裁量配分であれば他銘柄での忖度が行われるかもしれませんが、ネット抽選であれば涙を飲むしかありません。

また、IPOを中止した銘柄が再度上場を目指す際には、改めてブックビルディングの申込を行う必要があります。「前回当選していたから今回も当選扱いになる」なんて事はありません。シビアな世界であることを心に刻んでおきましょう。

上場を延期してその後IPOに再挑戦する事は可能

リベンジという筆文字

上場中止に至った原因が改善されれば、再びIPOに挑戦する事は可能です。実際に一度IPOを断念したけれど、準備を整え見事新規上場を果たした企業はいくつもあります。

さきほど上場を中止したIPO銘柄一覧で紹介した「株式会社オークネット(3964)」もその1つです。2016年に上場を中止しましたが、翌年2017年3月29日に再びIPOへ挑戦し、新規上場を果たしました。

ただ気になる事がありますよね。

「初値がどうなるか心配だな~」

そう初値です。上場中止をした事がある銘柄に対して、以下のような悪いイメージが残っている人も多いのではないでしょうか。

  • 内部統制に問題があった銘柄・・・組織として欠陥がある企業かも(反☆社の可能性も!?)
  • 業績予測の変更があった銘柄・・・今回も検討違いの予測をしているかも
  • 市場の急激な変化・・・高値で売り抜けたいベンチャーキャピタルの言いなりかも

真偽のほどは定かではなくても、こうしたイメージはなかなか拭えませんよね。他の投資家も同じようなイメージを持っていたら、需給面で不安を感じる人もいるでしょう。

そこで過去に上場を中止した銘柄が再びIPOに挑戦した場合の初値を紹介しておきたいと思います。

今回紹介した銘柄の中で再挑戦をしたのはオークネットのみなので、もう少し過去に遡って紹介する銘柄数を増やしています。

IPOに再挑戦した銘柄の初値結果

ではさっそく、過去に上場中止をした事があるIPO銘柄の初値結果を見てみましょう。

銘柄
(上場年月)
公開価格初値
(騰落率)
オークネット
(2017年3月)
1,100円1,300円
(18.18%)
ネットマーケティング
(2017年3月)
1,140円1,552円
(36.14%)
ツバキ・ナカシマ
(2015年12月)
1,550円1,620円
(4.52%)
ラクオリア創薬
(2011年7月)
1,600円1,480円
(-7.5%)
SEMITEC
(2011年6月)
1,250円1,210円
(-3.2%)

「オークネット」「ネットマーケティング」「ツバキ・ナカシマ」に関しては、公開株数が1,000万株を超える公募割れリスクが高い大型案件でしたが、いずれも公開価格を上回る初値となっています。

一方、「ラクオリア創薬」「SEMITEC」に関しては、公募割れを起こしていますが、2011年に起きた大震災の影響を受けてIPOの地合そのものが悪かった時期の上場です(2011年のIPOの勝率は約5割)。上場中止理由も震災による市場環境の悪化でした。

これらの結果を踏まえると、過去に上場を取りやめている事が直接初値に悪影響を与える要因になる事はなさそうです。

そのため、上場中止銘柄に対して悪いイメージを持っている人は、一旦気持ちをリセットして、フラットな目で銘柄を再度分析するようにしてくださいね。

【参考】「上場中止」と「上場廃止」のちがい

「上場中止」と「上場廃止」は響きが似た言葉ですが、意味が全く異なります。混同してしまわないように、整理しておきましょう。

上場中止とは、株式の上場前に上場を取りやめてしまうことです。本記事で紹介している内容ですね。

一方、上場廃止とは、すでに上場している銘柄に対して、証券取引所が上場継続不適と判断し株式市場での取引を終了させることです。証券取引所によって多少基準は異なりますが、主な理由としては以下が挙げられます。細かな規定は、証券取引所の定める上場廃止基準に則って判断されます。

東証の上場廃止基準
  • 上場契約違反
  • 法人格消滅(吸収合併など)
  • 完全親会社化(完全子会社化)
  • 会社の倒産
  • 経営破綻
参考:日本取引所グループ「上場廃止基準」

このように、上場中止はこれから上場しようとする銘柄に対して使用される単語であり、上場廃止はすでに上場している銘柄に対して使用される単語となります。中止と廃止は似ている言葉ですが、混同しないようにしてくださいね。

なお、今回事例として紹介した「オークネット」「ツバキ・ナカシマ」は上場廃止という過去も持っていました。再上場銘柄の案件でもあったんですね。「再上場したIPO銘柄について知りたい!」という方は、ぜひ以下の記事もご参照ください。

再上場のIPO銘柄は要注意!直近12銘柄中75%が公募割れ!

2018.08.09

まとめ~上場中止・延期の過去があっても冷静に銘柄分析を!~

ルーペでノートパソコンを覗きながら慎重にチェックしようとするスーツを着た女性

今回は、IPOを考えておきながら上場を中止・延期している事例もあることをお伝えしました。

上場を中止する理由は、「内部統制の問題」「業績予測の変化」「市場の変化」が主な内容です。ただ詳細については明らかにされないため、その企業に対して疑心暗鬼になってしまう人もいるでしょう。当選後であればなおさらです。

もしその後に当該銘柄が再度IPOに挑戦する際には、感情が先行してしまい、投資判断を見誤るおそれがあります。上場中止をした事がある銘柄であっても、需給面・財務面を冷静に分析するようにしてくださいね。