できるだけ多くのIPO抽選に参加しようと、日々励んでいる人も多いのではないでしょうか。
しかし、複数の証券会社で同時にIPO抽選を受けるには、それだけ多くの資金を用意する必要があります。資金にあまり余裕が無い人にはツライですよね。
そんな方にオススメなのが、今回紹介する「後期型証券会社」です。
後期型証券会社とは、ザックリと言えば「抽選スケジュールが遅い証券会社」です。さらに、ブックビルディング時に資金不要、又は資金拘束を受けないというメリットを併せ持っています。
抽選スケジュールの違いを活かし、証券口座間で資金移動を行えば、資金を抑えながらIPO抽選へ参加する機会を増やすことが可能となります。
限られた投資資金でIPO抽選に参加している人にとって、後期型の証券会社は抽選回数を増やす、ひいては当選確率を上げる為に欠かせない存在となるので、しっかりとチェックしておきましょう。
IPOは「前期型」と「後期型」の2種類!その違いは?
IPO投資では、証券会社を「前期型」と「後期型」とに分類することができます。分類基準は「抽選日のタイミング」です。
当然ながら、前期型と後期型の違いも抽選日のタイミングという事になります。具体的な違いについては言葉よりも画像を見てもらった方が分かりやすいと思うので、まずは前期型と後期型の違いを表した下記の画像をごらんください。
青枠で囲っている「抽選申込」「購入申込」は、前期型も後期型も同じタイミングで行われます。たとえば、前期型が7月6日に抽選申込を開始するなら、後期型も7月6日に開始します。
一方、赤枠で囲っている「抽選」は、前期型と後期型でズレが生じています。前期型は購入申込の”前“に抽選が行われ、後期型は購入申込の”後“に抽選が行われます。これが両者の違いです。
この違いが後期型に「資金効率・抽選回数UP」という大きなメリットをもたらします。
抽選日のズレを利用すれば資金効率・抽選回数UP
「前期型と後期型って、こんなにスケジュールに差があるんだ」
「じゃあ前期型の抽選に落選しても、後期型に申し込んでまた抽選を受けることができるね!」
そのとおりです。
前述した通り、前期型と後期型では抽選日にズレが生じます。その期間はIPO銘柄にもよりますが5日前後です。このズレを活かさない手はありませんよね。
つまり、前期型のIPO抽選に落選したとしても、その資金を後期型へ移動させ、再度IPO抽選に参加することができます。同一資金でIPOへ2回挑戦することができるというわけです。
前期型と後期型の組み合わせを多く作れれば、投資資金を節約しながら、IPOの抽選回数を倍増させる事ができます。
では、抽選日の違いを活かした資金運用例を見ていきましょう。
<例>
企業名:株式会社GA technologies(7/25東証マザース上場)
抽選に参加する証券会社:東海東京証券(前期型)、岩井コスモ証券(後期型)
ブックビルディング期間:2018/7/6~2018/7/12(前期型・後期型共に同一期間)
抽選日:下記画像参照
■抽選日
東海東京証券【前期型】:7/13
(出典:東海東京証券)
岩井コスモ証券【後期型】:7/20
(出典:岩井コスモ証券)
まずは、ブックビルディング申込前に投資資金25.1万円(仮条件の上限額×100株)を東海東京証券だけに入金します。岩井コスモ証券はブックビルディングにおいて資金不要というルール規定になっているので、この時点で入金する必要はありません。
そして、ブックビルディング期間中に東海東京証券と岩井コスモ証券の両方で抽選申込を済ませます。
で、先に抽選日が訪れるのが前期型の東海東京証券です。7/13でしたよね。抽選結果を確認します。この結果次第で今後取る行動が変わってきます。
①当選していた場合
東海東京証券で購入申込を行います。なお、この場合は後期型の証券会社へ資金を移動できなくなるので、後期型での抽選を諦める事になります。後期型のメリットを活かす事は出来ませんが、当選しているのでそれ以上の結果を得た事になります。
ちなみに、後期型の岩井コスモ証券では購入申込を行う必要はありません。購入申込を行わなくてもペナルティはないので安心してください(後期型共通の内容)。
②落選していた場合
後期型の岩井コスモ証券で7/20に行われる抽選に備えて、東海東京証券から資金25.1万円を移動させます。資金移動に要する期間は、遅くて2日です。
資金移動が完了したら、岩井コスモ証券で購入申込を行います。あとは抽選日を待つだけです。
当落の結果はその時の運次第となりますが、このような流れで資金を移動させれば、1単位分(100株分)の資金しかなくても前期型と後期型で2回の抽選を受ける事ができます。上記の例では、1単位分の資金25.1万円で2回の抽選を受ける事が出来ていますよね。
このように後期型の証券会社には資金効率・抽選回数UPという大きなメリットがあるので、まだ口座開設していない人は是非検討してみてくださいね。
なお、前期型で補欠当選となった場合には「①購入申込を行って繰上当選を狙う」か「②繰上当選を諦めて後期型に資金を移動させる」かという判断が必要になります。①を選択すると基本的に資金が拘束されるので、後期型での抽選を受ける事はできません。
この点の判断については以下の記事でまとめているので参考にしてください。
オススメ!後期型の証券会社4社
さて、投資資金が限られた人の強い味方となってくれる後期型証券会社が以下の4社です。
これらの証券会社を利用して、より多くのIPO抽選へ参加してみましょう!「資金を抑えたい・・・、けどIPO抽選にはたくさん参加したい!」という方は要チェックです。
なお、4社とも資金効率・抽選回数UPのメリットを活かせる後期型の証券会社なのですが、さきほどの資金運用例のように資金移動が「前期型⇒後期型」の1回だけで済む証券会社と「後期型⇒前期型⇒後期型」の2回必要な証券会社があります。
資金ルールの違いによって2パターンに分けられるので、後期型証券会社を利用する前に資金移動回数やプロセスを説明した以下の内容について確認しておいてくださいね。
それでは、資金移動のプロセスがどのように変わるのか、具体的な例を見ていきましょう。
資金移動が1回で済む後期型証券会社
この証券会社は、ブックビルディング(需要申告)時に資金が不要なため、資金移動が1回で済みます。具体的な証券会社としては、以下の2社が挙げられます。
- 岩井コスモ証券
- GMOクリック証券
この2社を利用すると、前期型の抽選に参加してから後期型へ参加する、といった後期型証券会社のイメージを代表するようなスケジュールとなります。
「資金移動の手間も資金の負担も抑えたい!」という方にオススメの証券会社です。後期型のメリットを最大限に活かすことができますからね。
このパターンの後期型証券会社の資金移動プロセスは、以下のようになります。
↓
②前期型の抽選日到来
↓
③前期型に落選した場合、後期型へ資金を移動させ購入申込
↓
④後期型の抽選日到来
この資金移動プロセスは、さきほどの資金運用例と同様の内容です。
資金移動が2回必要な後期型証券会社
この証券会社は、ブックビルディング(需要申告)時に入金しておかなければならないので、資金移動を2回行う必要があります。具体的な証券会社としては、以下の2社が挙げられます。
- カブドットコム証券
- 楽天証券
この2社は、資金ルールが少し特殊でブックビルディング(需要申告)時点で資金が必要となります。
「じゃあ、後期型のメリットを活かすことができないじゃん!!」と不安になった方はご安心ください。たしかにブックビルディング申込時に入金が必要ですが、その時点で資金を拘束されないため、すぐに資金を引き出し、他へ移動させる事ができるのです。
資金移動の手間がかかってしまうというデメリットはありますが、この2社も、後期型のメリットを活かすことができる証券会社と言えます。
このパターンの後期型証券会社の資金移動プロセスは、以下のようになります。
↓
②前期型へ資金を移動させ抽選申込
↓
③前期型の抽選日到来
↓
④前期型に落選した場合、後期型へ資金を移動させ購入申込
↓
⑤後期型の抽選日到来
カブドットコム証券と楽天証券ではこのような資金移動プロセスを踏む必要があるので、忘れずに行うようにしてくださいね。
なお、前期型証券会社の中にもブックビルディング時に資金が不要な証券会社もあります。以下に関連記事をまとめているので、併せてチェックしておきましょう。
後期型の証券会社の注意点3つ
後期型証券会社の特徴やメリットについてお分かり頂けたでしょうか?次のIPO銘柄から後期型証券会社を活用していこう!と思った人もいるでしょう。
ただ、後期型証券会社を利用する上で注意して欲しい事が3点ほどあります。それを簡単にまとめたのがこちらです。
「裏幹事って何?」と思っている人もいるかもしれませんね。以下でそれぞれの注意点について細かく見ていきましょう。
後期証券会社は裏幹事になる事が多いのでHPを要チェック
“裏幹事”と聞くと「何かもの凄くやばそう・・・」といったイメージを持つ人が多いかもしれません。まず断っておきますが、悪い意味で”裏”が使われているわけではないんです。”表に対する裏“又は裏ボスとか裏ステージなどの”隠れた“という意味合いで使われています。
どういう事かというと、裏幹事証券会社は目論見書に幹事として記載されないからです。つまり、目論見書に幹事として記載される証券会社が”表”であり、それに対して記載されない証券会社を”裏”と呼んでいるんですね。また公表されないから隠れた存在として”裏”扱いされているんです。
あくまで裏幹事という表現は通称であって、正式には「委託幹事」と言われています。役割としては、簡単に言うとIPO株の委託販売です。
では裏幹事についての説明はこの程度にして、後期型証券会社を利用する上での注意点について話を進めていきます。
実は、後期型証券会社のうち岩井コスモ証券を除く以下の3社は「裏幹事(=委託幹事)」としてIPO株を取り扱うことが多いんです。
- GMOクリック証券
- カブドットコム証券
- 楽天証券
既に説明したように、裏幹事の情報は目論見書などの正式な資料に記載されません。事前に告知が無い上に、ブックビルディング(需要申告)が始まってから自社HPでこっそりと告知されることも多く、気付かないうちにブックビルディング期間が終了してしまう可能性があります。
そのため、ブックビルディングが開始されたら各社のHPでIPO取扱ページをチェックしたり、各証券会社から配信されるメールをチェックしたりして、IPO取扱を見逃さないようにしましょう。
裏幹事に関する情報や取扱情報の見つけ方などについては、以下の記事で詳しく書いているので参考にしてくださいね。
購入申込を忘れると抽選対象外に
後期型の証券会社では、【抽選申込】→【購入申込】→【抽選】というステップを踏みます。前期型と違い、抽選を受けるためには2段階の申込作業が必要です。
前期型のステップに慣れているせいか、意外と2段階目の【購入申込】を忘れてしまう人が多いです。
せっかく【抽選申込】をしても、【購入申込】を忘れると抽選の対象外となってしまうので注意が必要です。
うっかり忘れないよう、アプリケーションやツールを使用してリマインドを徹底するなど、せっかくの機会を無駄にしないように気を付けましょう!基本的に、証券会社はご丁寧にアナウンスなんてしてくれませんので、自己管理を徹底するようにしてくださいね。
他銘柄のスケジュールとの兼ね合いもチェック
最後に、複数銘柄のIPOが集中した時は、後期型証券会社からのIPO申込について熟慮するようにしてください。
なぜなら、以下の画像のような状況が発生するからです。
「A銘柄の購入申込期間」と「B銘柄のBB(ブックビルディング)期間」が同じ時期になっていますよね。つまり、「後期型証券会社におけるA銘柄での資金が必要な時期」と「前期型証券会社におけるB銘柄での資金が必要な時期」が被ってしまうんです。
そのため、投資資金が限られている事を前提とすれば、どちらかのIPO抽選を諦めなければならない事になります。
では、この時にどう判断すべきか?というと、銘柄の分析評価を優先するようにしましょう。具体的には初値予想ですね。公募割れしそうな銘柄なら無理して抽選に参加する必要はありません。
銘柄の分析評価の結果、どちらも初値がプラスになりそうな場合は、証券会社の抽選配分数を基準に判断しましょう。抽選配分に回される株数が多い方が当選する確率が高いですからね。
ポイントとなるのは、割当株数が圧倒的に多い「主幹事証券会社」や抽選配分割合が高い「ネット証券」です。後期型証券会社も岩井コスモ証券を除く3社が抽選配分割合が高いネット証券となっています。
どの証券会社から申し込むのかは悩みどころではありますが、ほとんどのIPOでは仮条件決定時点で各証券会社の割当株数が公表されるので、その数値も参考に決断するようにしましょう。
なお、スケジュール次第では、後期型への申込と他銘柄の前期型への申込が可能な場合もあります。そのため、複数の銘柄のIPOに挑戦する場合は、各銘柄・証券会社のスケジュールチェックをしっかりと行うようにしてくださいね。
まとめ
今回は後期型証券会社の特徴やメリットについてお話してきました。
後期型証券会社の最大のメリットは、前期型と抽選スケジュールがちがうため、資金を抑えながらIPO抽選へ挑戦回数を増やすことができるということです。
そのためには、こまめな情報収集に基づいたスケジュール管理を徹底する事が不可欠となります。
可能な限り参加機会を増やし、IPO当選確率を上げていきましょう!
最後にもう一度後期型証券会社を一覧で紹介しておきますね。