「IPOでときどき聞く、裏幹事とか委託幹事ってなに?」
「主幹事証券会社や幹事証券とはちがうの?」
IPO投資において、裏幹事または委託幹事証券会社という言葉をご存知でしょうか?
ご存知無い方は、もったいない!
ライバルが少ないIPO抽選の機会を逃してしまっていることになります!
「ライバルが少ないってことは・・・IPOに当選しやすいってこと?」
そのとおりです。今日まで裏幹事の事を知らなかったあなたは、ライバルを少なくする側の人間だったというわけです。
そこで今回は、「裏幹事」を知らないがためにせっかくのチャンスを逃すことがないように、そもそも裏幹事とは何か?ということから、裏幹事になりやすい証券会社や見つけ方などをご紹介します。
「少しでも、IPO抽選へ参加する機会を増やしたいし、当選の喜びを味わいたい!」という方は必見ですよ。
裏幹事(委託幹事)証券会社とは?
主幹事又は幹事証券会社からIPOの販売を委託される証券会社のことを「裏幹事(=委託幹事)」と言います(以後、裏幹事に統一して表記します)。
過去のIPO投資において「あれ?この証券会社って幹事だったっけ?」と思った事があると思いますが、まさにその証券会社が「裏幹事」なんです。気付きにくい・隠れた存在だから“裏”という言葉が使われているんですね(あくまで通称です)。
気付きにくい理由は、目論見書の幹事一覧に証券会社名が記載されないからです。
以下の画像は、2018年8月2日に上場した株式会社イボキンの目論見書から幹事一覧が記載されている箇所を切り取ったものです。
(出典:SBI証券「株式会社イボキンの目論見書」)
このように、具体的にどの証券会社が裏幹事を引き受けるのかという事は書かれていません。また欄外に記載されているので、裏幹事の存在にすら気付かない人もいると思います。
では、裏幹事についてもう少し深掘りしていきましょう。
裏幹事への 3つのルート
裏幹事へのルートは以下の3つです。
- 委託販売の抽選に参加
- 同じグループ会社の主幹事・幹事証券からの委託
- 提携先・取引先の主幹事・幹事証券からの委託
【① 委託販売の抽選に参加】
各IPO銘柄毎に委託販売を希望する証券会社を募り、抽選が行われます。当選した証券会社が裏幹事として当該IPO株を販売する事ができます。
これらの事務手続きは、上場する証券取引所が行うのが一般的です。幹事証券会社が東証や名証などに委託販売の事務を委託する形になっています。
このルートが裏幹事へのメインルートであり、目論見書の欄外に記載されている部分に該当します。
【② 同じグループ会社の主幹事・幹事証券からの委託】
もう1つのルートは、同じグループ会社が主幹事や幹事を務める場合に、そのIPO銘柄の委託販売を受けるケースです。
後ほど詳しく紹介しますが、このルートで裏幹事になる証券会社は以下の通りです。
- 岡三証券と同じグループ会社である「岡三オンライン証券」
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券と同じグループ会社の「カブドットコム証券」
- 東海東京証券と同じグループ会社の「浜銀TT証券」や「西日本シティTT証券」など
目論見書には具体的に記載されませんが、このような委託販売も認められています。
【③ 提携先・取引先の主幹事・幹事証券からの委託】
そして最後の3つ目のルートが、提携先・取引先の証券会社が主幹事・幹事証券を務める場合に、そのIPO銘柄の委託販売を受けるケースです。
珍しいケースですが、たまにこのようなルートで裏幹事を務める証券会社があります。代表的な例が「みずほ証券とマネックス証券」です。
両社は提携関係にあり、みずほ証券と同じグループ会社であるみずほ銀行がマネックス証券の口座開設を仲介していたりします。
パターンとしては、みずほ証券が主幹事を務める時にマネックス証券が裏幹事になる事が多いです。
「裏幹事」と「幹事」の違い
「裏幹事」と「幹事(目論見書に記載されている幹事のこと)」の大きな違いは、IPOのサポートに対する関わり度合いです。
裏幹事は委託されたIPOの取り扱いに注力します。言い換えば、ただ株式を販売するだけです。
これに対して、幹事証券会社はIPOの上場準備から企業をサポートし、主幹事証券会社にいたっては上場後も企業が成長できるよう手助けを続けていきます。当然、IPO株の販売も行います。
この点が裏幹事と幹事の大きな違いです。
主幹事・幹事証券会社についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事に詳しくまとめていますのでぜひご参照ください。
裏幹事のメリット
前述したように、「どの証券会社が裏幹事になるのか」という情報は目論見書に明記されません。裏幹事となった証券会社のHPや情報配信メールでこそっと知ることができるぐらいです。
おそらく、裏幹事について調べている人の多くは、今まで裏幹事からのブックビルディングをし損ねていたのではないでしょうか?
つまり、裏幹事はその存在に気付かれにくいので、抽選参加者が少なくなりやすく、IPO抽選の当選確率が意外と高くなる傾向にあるのです。これが裏幹事のメリットです。
正規の幹事では無いため割当株数に過度な期待はできませんが、「IPO当選のチャンスを取りこぼしたくない!」という方は必見です。
裏幹事になりやすい証券会社はどこ?
裏幹事からのIPO当選を狙っていく上で、片っ端から証券会社の口座を開設するのも1つの手ではありますが、効率的な手段とは言えません。
そこで、過去3年間で裏幹事の実績数が多い証券会社を以下にまとめたので、これらの証券会社から口座開設をしていきましょう。裏幹事実績が無い証券会社の口座を開設しても意味無いですからね。
■裏幹事の実績件数2016年~2018年
証券会社 | 2018 | 2017 | 2016 |
---|---|---|---|
岡三オンライン証券 | 47 | 23 | 6 |
カブドットコム証券 | 24 | 27 | 18 |
松井証券 | 4 | 6 | 10 |
楽天証券 | 5 | 6 | 8 |
マネックス証券 | 10 | 4 | 4 |
SBIネオトレード証券 | 4 | 7 | 0 |
むさし証券 | 2 | 4 | 0 |
GMOクリック証券 | 1 | 0 | 2 |
IPOの件数自体は年間で100件弱なので、岡三オンライン証券やカブドットコム証券は割合にしておおよそ30%~40%ものIPO銘柄で裏幹事を務めている事になります。その他の証券会社も5%~10%の割合で裏幹事を務めています。
主幹事・幹事だけでなく、裏幹事からもIPOの当選を狙っていきたい人はこれらの証券会社の口座も開設しておきましょう。
なお、上記のほとんどの証券会社は上場承認日の数日後にIPOの取扱を発表します。取扱が判明してからブックビルディングまで1週間ちょっとの期間的余裕があるので、その時に口座開設をしても間に合います。
しかし、松井証券・楽天証券・SBIネオトレード証券はブックビルディング開始後に発表される事が多いです。IPOの取扱に気付いてから口座開設をしても申込に間に合わない恐れがあります。
そのため、特にこの3社については予め口座開設をしておく事をオススメします。
狙い目の裏幹事はどこの証券会社?
IPO投資においては、裏幹事も含めて全ての幹事証券からブックビルディングに申し込むのが基本戦略です。抽選回数を増やして当選確率を上げるためです。
しかし、投資資金に限りがあるのも事実です。全ての裏幹事にまで手が回らない人もいるでしょう。
また、裏幹事の取扱の有無をチェックするのが面倒臭い、という人もいるかもしれません。
「ちょっとここはチェックしておくべき!とかイチオシの証券会社はないの?」
というのが正直な所ではないでしょうか?
そこで、裏幹事としてオススメの証券会社を「当選確率」と「資金」の2つの側面から紹介したいと思います。
オススメは「カブドットコム証券」と「岡三オンライン証券」
前述したように、裏幹事のメリットは「抽選参加者が少なくなりやすく、IPO抽選の当選確率が意外と高くなる傾向がある点」でしたよね。その中でも特に当選に期待を持てるのが以下の2社です。
この2社は裏幹事になるルートが「同じグループ会社の主幹事・幹事証券からの委託」です。
このルートで裏幹事になる証券会社は、抽選で裏幹事になる証券会社より配分される株数が多くなる場合があります。つまり、当選人数が増えるので当選に期待を持てるというわけです。
では、どういった場合に配分株数が多くなるのか?というと、委託元である証券会社が主幹事を務めている時です。
実際にどれだけの株数が配分されているのかをいくつかのIPO銘柄を例にしてそれぞれ見てみましょう。
■カブドットコム証券
銘柄情報 | 三菱UFJの配分株数 | カブドットコムの配分株数 |
---|---|---|
ソウルドアウト | 2,359,100 | 9,200 |
ジェイエスビー | 446,300 | 1,700 |
九州旅客鉄道 | 36,000,000 | 998,100 |
銘柄情報 | 岡三証券の配分株数 | 岡三オンラインの配分株数 |
---|---|---|
トレードワークス | 199,500 | 2,000 |
ミダック | 348,800 | 2,000 |
もしかしたら「九州旅客鉄道以外の配分株数は少ない!」と感じた人もいるかもしれませんが、実は裏幹事としてはかなり多めの配分株数なんです。
というのも、もう1つの裏幹事へのルートである「証券取引所が行う委託販売の抽選」に対しては、ほとんどの銘柄で上限2,000株の配分しか行われないからです。このルートで裏幹事になった証券会社全体で2,000株という意味です。裏幹事1社当たりだと100株~1,000株の配分数となります。
これらの株数と比較すれば、「同じグループ会社の主幹事・幹事証券からの委託」を受けるカブドットコム証券と岡三オンライン証券の配分株数が多い事が分かると思います。
そのため、裏幹事の中ではカブドットコム証券と岡三オンライン証券が狙い目となるんですね。また、裏幹事としての実績件数もこの2社が群を抜いている点もオススメするポイントです。
なお、三菱UFJモルガン・スタンレー証券及び岡三証券が幹事の時は、ほとんどの銘柄で裏幹事への配分株数が100株~1,000株となっています。
ちなみに、「証券取引所が行う委託販売の抽選」に対する上限設定は2,000株と決まっているわけではありません。規模が大きいIPOではそれ以上の設定となる事もあります(北九州旅客鉄道では501,200株が上限となっていました)。こうした銘柄では、全ての裏幹事で当選のチャンスが高まるので、上限設定がいくらになっているのかもチェックする癖を付けておきましょう。
ちなみに、東海東京証券の同グループの証券会社は、地域密着型ばかりなので万人にオススメできる証券会社ではありません。口座開設も店頭のみの受付となっています(基本ネットで口座開設はできません)。
逆に言えば、お住まいの地域に東海東京証券の同グループの証券会社があれば、オススメの証券会社となります。ライバルが少ない上に裏幹事ですから、まさに穴場化する証券会社です。
以下に東海東京証券と同グループの証券会社の中から裏幹事になりやすい証券会社を主な営業地域と共に一覧で紹介しておきますので、参考にしてください。
証券会社 | 主な営業地域 |
---|---|
とちぎんTT証券 | 栃木県 |
西日本シティTT証券 | 福岡県・熊本県・宮崎県・鹿児島県 |
浜銀TT証券 | 神奈川県 |
ほくほくTT証券 | 北海道(札幌・旭川)・富山県・石川県・福井県 |
この中でも特にオススメなのが浜銀TT証券です。個人投資家への抽選配分割合がほぼ100%なので、当選のチャンスが一番ある証券会社と言えるでしょう。神奈川県にお住まいの方は是非検討してみてくださいね。
前受金不要の証券会社もオススメ
投資資金が限られている人には、前受金不要でブックビルディングに参加できる証券会社がオススメです。
裏幹事になりやすく、かつ前受金不要な証券会社は以下の3社です。
岡三オンライン証券は、裏幹事実績も多いので年に何度も抽選を受ける事ができます。しかも資金不要で当選も期待できるわけですから、積極的に口座開設をしておきたい証券会社と言えるでしょう。
また、SBIネオトレード証券に関してはさきほども触れたように、裏幹事としての取扱が発表されるのがブックビルディング開始後です。気付きにくい反面、しっかりチェックしておけば競争率の低い抽選を受ける事ができます。ある意味当選確率が高い証券会社と言えるので、口座開設しておいても損は無いと思いますよ。
ただし!裏幹事は気付きにくい・・・注目すべきポイントは?
ここまで、裏幹事は気付く人が少ないため、意外と当選確率が高いというメリットがあることをお話しました。
しかし、このメリットは、裏を返せば「裏幹事になった事実が分かりにくい」というデメリットにもなります。
せっかく口座を持っていて資金も準備できる状態だったのに見落としてしまったら、悔しいですよね。
そんなことにならないためにも、注目すべきポイントをお伝えしましょう。
- 各社のホームページをチェック!
- 関連グループ会社がIPOに絡む時はチェック!
- 各証券会社からの情報配信メールをチェック!
- Twitterなどの即時性があるSNSでIPOのインフルエンサーをチェック!
具体的にどういったことか、それぞれお話していきましょう。
各社のホームページをチェック!
裏幹事を見つけ出す単純な方法は、証券会社のホームページのチェックです。
「お知らせ・新着情報」や「IPO取扱銘柄一覧」などにIPOの情報が掲載されている事があります。ログイン後でないと見れない証券会社もあるので、ログインしてからチェックする事をオススメします。
裏幹事としての取扱が発表されるタイミングは、「上場承認日の数日後」と「ブックビルディング開始後」です。そのため、「上場承認日の1週間後」と「ブックビルディングが開始されてから2・3日後」にチェックすれば漏れなく裏幹事の情報を拾う事ができると思います。
あと、全ての証券会社をチェックするのは無理があるので、今回紹介した「裏幹事になりやすい証券会社」を中心にチェックしていきましょう。
なお、大型IPOの場合には裏幹事となる証券会社が増える傾向にあるので、その際には調査範囲をいつもより広めにしてみると良いでしょう。もしかしたら「意外な所が裏幹事に・・・!?」なんてラッキーな事態に出くわすかもしれませんよ。
グループ会社がIPOに絡む時はチェック
グループ会社がIPOに携わる時も要チェックです!IPOの委託販売を引き受ける可能性がグンと上がります。
目論見書などでグループ会社の名前を見付けたら、ぜひとも裏幹事になりやすい証券会社の方もチェックしてみましょう。基本的には以下の3パターンですね。
- 岡三証券⇒岡三オンライン証券をチェック
- 三菱UFJモルガン・スタンレー証券⇒カブドットコム証券をチェック
- 東海東京証券⇒浜銀TT証券等をチェック
「グループ企業って言われても、どこか分かんないし・・・」という方のために、以下にグループとの関係を一覧にしてまとめたのでぜひ参考にしてくださいね。
証券会社名 | 関連グループ |
---|---|
岡三オンライン証券 | 岡三グループ (岡三証券) |
カブドットコム証券 | MUFGグループ (三菱UFJモルガン・スタンレー証券) |
浜銀TT証券など | 東海東京フィナンシャル・グループ (東海東京証券) |
マネックス証券 | マネックスグループ |
SBIネオトレード証券 | SBIグループ |
楽天証券 | 楽天グループ |
GMOクリック証券 | GMOインターネットグループ (GMO系企業) |
安藤証券 | カレラアセットマネジメント 美らヒルズ・マネジメント |
松井証券 | - |
むさし証券 | - |
ちなみに、松井証券とむさし証券は関連グループが無く、独立した証券会社となります。
また、楽天証券についてもあまり関連グループとの紐付けに期待することはできないと言えるでしょう。
ただし、今後の状況によってはグループ内企業や提携・出資などの関係にある企業のIPO時にイニシアティブを取るかもしれません。「へ~ここのグループだったんだ」程度に覚えておきましょう。
各証券会社からの情報配信メールをチェック
証券会社によっては、メールマガジンなどの情報配信サービスを行っている証券会社もあります。
証券口座を開設して、情報配信メールの受信を設定していると、ある日ふと「あれ?これって、裏幹事??」と気付くことがあるかもしれません。
なお、証券会社にもよりますが、口座を開設した時点では情報配信メールの受信設定ができていない事があります。念の為、各証券会社にログインして「メールサービス」などのページに行き、設定内容を確認しておきましょう。
ちなみに、いちど裏幹事をお知らせするメールが届いたら、どの文章がカギとなるのか分析してみましょう。同様の文章を自動振り分けのルールに指定して、フォルダを分けたりラベル付けを行ったりすると、手間を短縮することができてオススメです。
Twitterなどの即時性があるSNSでIPOのインフルエンサーをチェック
IPOスケジュールなどに関する情報をツイートしているTwitterアカウントをフォローするなど、即時性の高いSNSを有効活用することもポイントです。
ただし、情報の正誤確認は必ず行うようにしましょう。投資の世界では、情報による市場操作を駆使する手練もいます。収集した情報を参考にする程度で留めて、自身でしっかりと判断をされることをオススメします。
まとめ~裏幹事(委託幹事)からもIPOの当選を狙っていこう~
今回は、裏幹事(委託幹事)という用語の説明や主幹事・幹事証券会社との違い、裏幹事になりやすい証券会社・オススメの証券会社、裏幹事を見つけ出すポイントなどを紹介しました。
裏幹事には見つけにくいというデメリットがありますが、だからこそライバルも少なくチャンスだと言えます!
「この証券会社が主幹事になってるみたいだから、怪しいかも・・・?」
「結構大きめのIPOが来るみたいだし、裏幹事の可能性が無いかチェックしておこう」
など、少しでもピン!とくるIPOがあればこまめに情報をチェックしていきましょう。そして、主幹事・幹事だけでなく、裏幹事からもIPOに申し込んで当選を狙っていってくださいね。