突然ですが、あなたはIPOの全体の流れを把握できていますか?
IPOは、およそ1ヶ月という短いスケジュールの中で「上場承認」から「上場」までの手続きが進められます。全体の流れを把握しておかなければ、「抽選の参加忘れ」や「購入申込の期限切れ」などによって投資のチャンスをふいにしてしまうかもしれません。
そこで今回は、IPOの一連の流れや各手続きのポイント・注意点・やり方などについて紹介したいと思います。
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IPOの流れ~まずは全体像を把握~
「上場承認」から「上場」までのIPOの流れをフローチャートで表すと以下のようになります。
IPOはこのような流れで進んでいきます。まずは全体の流れを把握して、それから1つ1つの手続きについて見ていった方がより理解が深まると思いますよ。
それでは、「① 上場承認」から詳しく見ていきましょう。
① 上場承認
上場承認とは、簡単に言うと、上場申請をした企業が上場する証券取引所(東証や名証など)から「上場してもOK」というお墨付きをもらう事です。上場を承認した証券取引所は、上場する事をHP等で公表します。
たとえば、東京証券取引所ではTOPページの「マーケットニュース」の欄に上場承認の情報が掲載されます。
(出典:東証)
個人投資家は、基本的にこの情報によって上場するIPO銘柄を知る事になります。そのため、各証券取引所のホームページは逐一チェックしておきましょう。
また、新規上場するにあたって、監査法人による監査や主幹事証券会社の審査も受けなければならないので、上場承認に至るまでには一般的に数年の期間が必要になります。
② 仮条件の決定
仮条件とは、ブックビルディングにおいて投資家に提示するIPO株の価格帯を指します。「1,500円~2,000円」などのように一定の幅を持たせた金額となります。
さて、もう一度「IPOの全体の流れ」を見てもらうと、「① 上場承認」から「② 仮条件の決定」までに約2週間もの時間を費やしている事が分かります。この間、何をやっているのかというと、保険会社や銀行などの機関投資家に対してロードショーを行っているんです。プレゼンのようなものですね。
ロードショーでは、上場する企業が目論見書等を基に事業概要や成長性などの説明を行います。機関投資家はこの説明及び有価証券報告書等を参考にして、主幹事証券会社に発行価格の意見を述べます。そして、最終的に主幹事証券会社が仮条件を決定します。
仮条件で決定する価格は、公開価格の基礎となるので、多くの時間をこの工程に費やしているんですね。
仮条件の決定までに目論見書をチェック
「① 上場承認」から「② 仮条件の決定」までに約2週間かかる事はお伝えした通りです。この期間を利用して、目論見書をチェックしておきましょう。ブックビルディングが開始されるまで、ただ指をくわえて待っておくのはダメですよ。
ただ目論見書には様々なデータが掲載されるので、どのIPO銘柄でも優に100ページを超えるページ数になります。全てのデータに目を通すのは非常に大変です。
そこで、最低限チェックしておきたい項目を紹介しておきますので、参考にしてください。
- 上場日までのスケジュール
- 上場する市場
- 事業内容
- 財務データ
- 想定株価
- 公募・売出の株式数
- 既存の株主
もしIPO株を上場後一定期間保有する予定であれば「ロックアップ条件・期間」もチェックしておきましょう。
なお、仮条件が決定すると、その内容に即した目論見書の第一回訂正分が提出されるので、必ずチェックするようにしてください。
③ ブックビルディング
ブックビルディングとは、予め設定した仮条件の価格の範囲内において、各投資家の申込価格を基に新規上場企業の公開価格を決定する方式です。需要申告とも呼ばれます。
IPOの流れの中で個人投資家が手続きとして参加するのは、このブックビルディングからとなります。
ブックビルディングは「何円で何株買いたいか」を申告する手続きですが、参加している事がその後行われる抽選の対象となる為の条件にもなります。IPOは人気が高く、申込者多数となり抽選となる場合が多いので、必ずブックビルディングに参加するようにしましょう。
その他、ブックビルディングに関して重要なポイントや注意点を以下にまとめておきます。
- ブックビルディング期間内に必ず申し込む事
- 申込価格は仮条件の上限値とする事
- 申込株数は基本1単位でOK(1単位100株の場合がほとんど) *
- 当選確率を上げる為に複数の証券会社に申し込む事
④ 公開価格の決定
ブックビルディングが終了すると、それに基づいた公開価格が決定されます。公開価格とは、発行・売出をする株価であり、IPOの抽選に当選した人の購入価格となります。
たとえば、公開価格が1,000円と決定されれば、100株の購入申込をした人は1,000円×100株=100,000円でそのIPO株を購入する事になります。
公開価格は仮条件の範囲内で決定されますが、「上限価格」となったか「上限価格未満」となったか、というのは非常に重要なポイントになります。
公開価格が上限価格未満となったIPO銘柄は、上場後の初値(最初に付く株価)が公募割れ、つまり公開価格よりも低い株価となるリスクが高いからです。
ちなみに、2016年・2017年において、公開価格が上限価格未満となったIPO銘柄は全て公募割れを起こしています。
銘柄 | 公開価格 (仮条件) | 初値 |
---|---|---|
アルヒ | 1,300円 (1,150円~1,340円) | 1,270円 |
西本Wismettac | 4,750円 (4,500円~5,250円) | 4,465円 |
LIXILビバ | 2,050円 (1,950円~2,200円) | 1,947円 |
スシロー | 3,600円 (3,600円~3,900円) | 3,430円 |
マクロミル | 1,950円 (1,900円~2,100円) | 1,867円 |
バロックジャパン | 2,000円 (2,000円~2,240円) | 1,900円 |
KHネオケム | 1,380円 (1,330円~1,670円) | 1,306円 |
ベイカレント | 2,100円 (2,100円~2,360円) | 1,963円 |
ソラスト | 1,300円 (1,270円~1,400円) | 1,222円 |
ユー・エム・シー | 3,000円 (3,000円~3,100円) | 2,480円 |
公募割れはIPO投資のデメリット・リスクの1つなので、公開価格がどのような価格となったのかは必ずチェックするようにしましょう。
⑤ 抽選
発行・売出株数に対して申込者が多数となった場合には、公開価格決定後に抽選が行われます。よっぽど人気の無いIPO銘柄でない限り、抽選が行われると考えておいて良いと思います。
抽選方法は、さきほど簡単に触れたように、証券会社によって異なります。1人1口の完全平等抽選の証券会社もあれば、申込株数に比例した抽選口数が与えられる証券会社もあります。
いずれにしても、この時点でやれる事は何も無いので、当選する事を願って結果を待つのみとなります。
⑥ 当選・購入
公開価格決定日の翌営業日又は2営業日後には、抽選の結果が分かります。一番ドキドキする瞬間です。
抽選の結果を確認する方法は以下の2つです。
- 証券会社のWEBサイト
- 証券会社の当選・落選メールサービス
一番確実な方法は、証券会社のWEBサイトで確認する方法でしょう。メールサービスは便利なツールですが、その他のメールに埋もれてしまうリスクも有りますので。
いずれにしても、能動的にIPO抽選の当落確認をする癖を付けるようにしてください。
ここで注意して欲しいのが、当選だけでは購入手続きがまだ済んでいない、という事です。IPOにおける当選とは、株を購入する権利の付与であって、その権利を行使しなければ失効してしまいます。
しかも、購入する手続きが行える期間は非常に短いです。
「当落の確認忘れ」や「購入の申込忘れ」がないように、抽選の確認を必ず行い、その時にそのままIPO株の購入手続きを済ませるようにしましょう。
参考:前期型との違いを活かせ!IPO後期型の証券会社で資金効率・抽選回数をUP
このようにIPOの流れが異なる証券会社においても「購入手続き」は重要なので、忘れずに行うようにしてください。
IPO株の購入方法・買い方
証券会社によってIPO株の購入フォームや表示方法などに違いが有りますが、購入手順は概ね同じです。一般的な流れは以下のようになります。
- 購入可能日を迎えると、ブックビルディング一覧画面に「購入申込」などのボタンが表示される
- ボタンをクリックし、目論見書の閲覧へ(省力不可)
- 目論見書を確認した旨の確認ボタンをクリック
- 購入画面に遷移するので、当選した株式数を入力
- 内容を確認して購入ボタンをクリック
これでIPO株の購入申込は完了です。念の為、購入手続きが完了している事を再確認しておきましょう。ブックビルディング一覧画面を見て、購入結果が反映されていたり、約定済みなどとなっていればOK。
大事な事なのでもう一度書いておきますが、当選したら必ず購入手続きを行ってくださいね。
⑦ 上場
上場承認からおよそ1ヶ月が経過し、上場日を迎える事となります。証券取引所では上場セレモニーが行われ、東証ではお馴染みの鐘が打ち鳴らされます。
そして、この日を境に市場においてIPO銘柄を自由に売買できるようになります。
新規上場企業にとっても投資家にとっても待ちわびた1日と言えるでしょう。
さて、IPOの流れとしては「上場日」が最終局面という事になりますが、多くの人が上場日に初値売りをしようと考えていると思うので、最後にIPO株の初値売りのやり方について説明しておきます。
上場日に初値売りする方法
初値とは上場して初めて付けられる株価ですから、初値売りをする場合は当然ながら取引が開始されるまでに売り注文を出しておく必要があります。
売り注文を行えるタイミングは、基本的に上場日の朝からです(上場日の前営業日から行える場合もあります)。詳細な時間は、証券会社によって異なり、早朝5時から受け付けている所もあれば、8時頃から受け付ける所もあります。
注文方法としては、売却価格を指定しない「成行注文」と売却価格を指定する「指値注文」があります。初値で確実に売りたい場合は成行注文を選択します。
なお、”買い”と”売り”の需給バランスが悪く、上場日に初値が付かない事もあります。この場合、上場日に出した売り注文は失効してしまうので、再度売り注文を出さなければならない点には注意が必要です。
まとめ
今回は主にIPOの流れについて説明しました。IPOの全体像が頭に入っていれば「いつ何をすれば良いのか」という事が自ずと見えてくるでしょう。複数のIPOが同時進行したとしても、混乱する事はないと思いますよ。
そして、IPOの流れの中で最も重要な事は以下の3つです。
- ブックビルディングに必ず参加する事
- 抽選の当選確認を必ず行う事
- 当選後はすぐに購入手続きを行う事
「忘れてしまいそうで不安・・・」という人は、IPO銘柄ごとにスケジュール管理をしておきましょう。
なお、「なかなかIPOに当選しない・・・」と悩んでいる人は、以下の記事を参考にしてみてくださいね。