IPO投資をしていると”オファリングレシオ(O.R)“という単語をよく目にしますよね。IPOを評価する指標の1つとして、多くのIPO関連サイトで用いられています。
ただ、オファリングレシオに関する数値を見せられても、オファリングレシオの意味や評価の仕方を理解していないと、銘柄分析の役には立ちません。
「そもそもオファリングレシオって何なの?」
「どうやってオファリングレシオを計算するの?」
「オファリングレシオをIPO分析にどう活用するの?」
このような疑問を抱いている人もいるでしょう。
そこで今回は、オファリングレシオの意味や計算式、標準的な数値などについて紹介していきたいと思います。また、IPO分析の精度を高められるように、オファリングレシオに関するIPO分析の仕方についても過去のデータを用いて説明したいと思います。
オファリングレシオとは?
オファリングレシオとは、発行済株式総数のうちどれくらいの株数を株式市場に流通させるかを表す指標です。一言で表すと「流動性」を表す指標ですね。
IPOでは公募・売出しを行う事によって、株式市場へ株式を流通させて資金を調達します。オファリングレシオは、その流通させる株数が発行済株式総数に対してどれくらいの割合なのかを表しているんですね。
計算式
では、オファリングレシオの計算方法について見ていきましょう。計算式はこちらです。
* 公開株数は公募株数、売出株数、オーバーアロットメントによる売出株数の合計
* 発行済株式総数は上場時点の株数となるように、上場前の発行済株式と公募株数を合算した株数です
なお、計算に用いる各株数は、東証HPの新規上場会社情報ページの一覧にある「会社概要」のPDFで確認する事ができます。
それでは、例題で計算練習をしてみましょう。
売出株数:100,000株
オーバーアロットメントによる売出株数:60,000株
発行済株式総数(上場前):2,000,000株
計算できましたか?答え合わせをしていきますね。
まず公開株数を求めていきます。公募株数、売出株数及びオーバーアロットメントによる売出株数の合計なので、300,000株+100,000株+60,000株=460,000株です。
次に上場時の発行済株式総数を求めます。上場前の発行済株式総数と公募株数の合計なので、2,000,000株+300,000株=2,300,000株です。
これらの株数を用いてオファリングレシオを計算します。この例題のオファリングレシオは、公開株数460,000株÷上場時発行済株式総数2,300,000株×100=20%となります。
正解できましたか?
様々なサイトでオファリングレシオのデータが表示されているので実際に計算する必要は無いと思いますが、簡単な計算なのでご自身でもオファリングレシオを計算できるようにしておきましょう。
オファリングレシオの平均はどれくらい?
オファリングレシオを求められるようになったとしても、その数値を評価するためには目安が必要ですよね。
そこで、2016年~2018年の新規上場銘柄のオファリングレシオの平均値を以下に紹介しておきます。
年 | オファリングレシオの平均値 |
---|---|
2018年 | 26.54% |
2017年 | 28.43% |
2016年 | 27.53% |
このように、ここ3年間は平均値が20%台後半となっています。3年間トータルの平均が27.50%です。
そのため、オファリングレシオの高低を判断する際は、27.50%を基準に±5%の範囲内なら標準的、それ以上なら高い、それ以下なら低いと判断すると良いでしょう。
オファリングレシオはIPOを評価する指標の1つ
冒頭でも紹介したように、オファリングレシオはIPO銘柄を分析する際の指標の1つとして用いられます。
その理由は、オファリングレシオと初値騰落率に相関関係があるからです。
もう少し具体的に言うと、両者は以下のような関係にあります。
- オファリングレシオが低いほど、初値騰落率は高くなる
- オファリングレシオが高いほど、初値騰落率は低くなる(公募割れの可能性も高まる)
オファリングレシオは発行済株式総数のうちどれくらいの株数を株式市場に流通させるかを表す指標でしたよね。
その数値が低いという事は、株式市場に流通する株数が発行済株式総数と比較して少ない事を意味します。言い換えると、希少価値の高い銘柄と言えます。そういった銘柄では、供給量に比して需要量が圧倒的に多くなりやすく、初値がどんどん高くなっていくんですね。
一方、オファリングレシオが高い場合には、流通量が多くなるので、さきほどの需給バランスと逆の構図になります。そのため、初値が上がりにくくなってしまうんですね。公募割れの可能性もあるので、オファリングレシオが高い銘柄は注意が必要です。
それでは、実際のデータを用いて、オファリングレシオと初値の関係について見ていきましょう。
データで見る「オファリングレシオ」と「初値」との関係
以下の表は、2016年~2018年のIPO銘柄をオファリングレシオを基準に区分し、各区分の平均初値騰落率を表したものです。
オファリングレシオ | 件数 | 平均初値騰落率 |
---|---|---|
10%以下 | 13件 | 205.46% |
10%超20%以下 | 70件 | 116.37% |
20%超30%以下 | 109件 | 102.18% |
30%超40%以下 | 38件 | 78.72% |
40%超50%以下 | 15件 | 33.40% |
50%超 | 18件 | 1.84% |
前述した内容がデータにも如実に現れている事が分かります。オファリングレシオが10%以下のIPOでは、平均初値騰落率はなんと205.46%にもなっています。逆に、オファリングレシオが50%超のIPOでは、平均初値騰落率は1.84%しかありません。
これらのデータを参考にすると、IPO分析の際には「40%超50%以下:要注意銘柄」「50%超:危険銘柄」と評価して良いかもしれませんね。
まとめ
今回はオファリングレシオについて紹介しました。
IPO分析においてプレミア度(又は危険度)を表す指標の1つとして用いられるオファリングレシオ。IPO分析をする際に「オファリングレシオを気にしていなかった」という人は、今回紹介したデータ等を参考にして、分析精度を高めてくださいね。
なお、オファリングレシオが低い銘柄でもロックアップの解除によってプレミア感が一気に損なわれるおそれもあります。そのため、既存株主のロックアップの状況も併せてチェックするようにしましょう。