IPOに投資するのなら「ブックビルディング(BB)」は必ず理解しておかなければならない用語です。「需要申告」とも呼ばれます(以下、ブックビルディングで統一します)。
簡単に説明すると、ブックビルディングとはIPO株の公開価格を決定する方式です。その他に「入札方式」というのが有りますが、ほぼほぼ全てのIPOでこのブックビルディングが採用されています。
さて、初めてIPO投資に挑戦する人ならブックビルディングについて様々な疑問を抱いていることでしょう。
「そもそもブックビルディングって何?」
「ブックビルディングに申込期間はあるの?いつまで?」
「ブックビルディングの申込株数や価格はどうしたらいいの?」
また、何度かIPO投資をした事がある人でも上記以外の細かい知識については、曖昧になっているのではないでしょうか。
そこで今回は、IPOに申し込む際のブックビルディングに関する基礎知識から少し細かい疑問点まで解説していきたいと思います。
【基礎】IPOのブックビルディングとは
IPOにおけるブックビルディングとは、予め設定した仮条件の価格の範囲内において、各投資家の申込価格を基に新規上場企業の公開価格を決定する方式です。
投資家B 「A社の成長性などに期待して、1,500円で100株買います。」
投資家C 「ん~、ちょっと割高に感じるから、1,200円で100株買おうか。」
これらの申告を集計して、基本的に一番申告が多かった価格を公開価格として決定します。
このように投資家に”いくらなら買いたい!(需要)”という申告をしてもらうため、需要申告と言うんですね。
幹事証券会社の立場から見ると、ブックビルディングは公開価格を決定するプロセスとなります。一方、投資家の立場から見ると、ブックビルディングはただのアンケートではなく、IPOに参加するための必要条件となります。
”抽選になる”という事は、それだけ”購入希望者が多い”という事ですから、ブックビルディング参加者だけで配分が終了してしまうはずです。そのため、ブックビルディングに参加していない人に株が割り当てられる可能性は極めて低くなります。
こうした事からも、ブックビルディングはIPOに参加する必要条件と言えるでしょう。
そのため、購入したいIPOのブックビルディングには必ず参加しましょう!
さてブックビルディングでは、申込期間内に以下の2つの項目を決定して申込を行います。
- 株数
- 価格
なお、SBIのIPOチャレンジポイントなどの各証券会社固有の項目もありますが、ここでは説明を割愛させていただきます。
それでは、ブックビルディングの申込内容についてもう少し詳しくみていきましょう。まずは期間からです。
【必ず申込期間内に手続きを!】ブックビルディング期間はどれくらい?
まずは「証券取引所の上場承認」から「上場」までのIPOの流れを簡単に紹介しておきますね。ブックビルディングはこの流れの中の3番目に位置します。
- 証券取引所の上場承認
- 仮条件の決定
- ブックビルディング
- 公開価格の決定
- 抽選・購入
- 上場
「①」から「⑥」までに要する期間がどれくらいか想像できますか?ほとんどのIPOでおよそ1ヶ月間です。かなりスピーディーに手続きが進んでいきます。
この早い流れの中にブックビルディングは位置付けられているので、当然その期間もかなり短いものになっています。一般的にブックビルディングの期間は約1週間です。
この期間内にブックビルディングに参加しなければ、投資しようとしていたIPO株を購入することはできません。さきほども書いたように、ブックビルディングはIPO投資に参加する絶対条件だからです。
そのため、ブックビルディングへの参加を忘れないように、上場間近の「IPOスケジュール」は必ずチェックしておきましょう。
当初の期間が短縮・変更されることはある?
目論見書(上場する企業や発行する株などの説明が記載された書類)に記載されている各日程の部分には、「予定」という単語が必ずと言っていいほど用いられています。
また、証券会社の募集案内には、「日程等は予告なく変更される事があります」という文言も記載されています。
つまり、ブックビルディングの期間は短縮・変更される可能性がある!という事です(稀ですけどね)。
- ブックビルディング受付開始日が1日先送りになる
- ブックビルディング受付終了日が1日前倒しになる
- ブックビルディング開始・終了時刻がずれる
こういった変更が発生する事が有ります。実際に、2015年に上場した日本郵政グループ3社では、ブックビルディング受付終了時間が1時間前倒しになりました。
また、ブックビルディングだけでなく、仮条件の内容や上場日なども変更される事があります。
IPOタイムズでは最新情報を発信していますが、個々人でも利用している証券会社のHPの「お知らせ」などをチェックして変更の有無を確認するようにしてください。
100株?1,000株?ブックビルディングの株数は何株申し込める?
ブックビルディングの申込株数の欄は「そのIPO株を何株買いたいか」を入力する箇所です。100株購入したいなら100株、1,000株購入したいなら1,000株と入力します。
ただ申込株数を入力するにあたって、「単元株」というルールをおさえておかなければなりません(会社法第188条)。
単元株とは、一定の株数を1単元として設定した売買単位を指します。株式を売買する際は、基本的に単元株の整数倍の株数を取引する事になります。
それを踏まえると、ブックビルディングでの申込株数は、単元株の整数倍という事になります。たとえば、単元株が100株のIPO株の場合では、100株・200株・300株・・・となります。1株や101株のような端数の出る株数で申し込む事はできません。
なお、申込が多い場合は抽選となるので、ブックビルディングで申告した株数が必ず購入できるわけではありません。また、証券会社によって、抽選権が与えられるのは単元株1単位までと規定されている所もあるので、申込前に必ずチェックするようにしてください。
申込株数と当選確率に関しては当記事の最後に紹介します。
ブックビルディング時に申込株数に相当する投資資金は必要?
結論を先にいうと、ブックビルディング時に申込株数に相当する投資資金が必要かどうかは、証券会社によって異なります。
- ① ブックビルディング時に口座に資金がなくてもOK
- ② ブックビルディング時に口座に申込株数に相当する資金が必要(資金拘束は無し)
- ③ ②の場合で更に資金も拘束
①の場合、極端な話、証券会社の口座が0円でもブックビルディングに参加できます。具体例を挙げると、岡三オンライン証券がこれに該当します。かなり稀な存在です。というのも、②又は③に該当する証券会社が多いからです。
資金に余裕の有る人には関係無い話ですが、投資資金が限られている人にとって、資金が必要なタイミング及び資金が拘束されるタイミングは重要なポイントです。複数のIPOの時期が重なれば、投資チャンスをふいにする事になるからです。
また、ブックビルディング時だけでなく、抽選時や当選時などで資金が必要なタイミング及び資金が拘束されるタイミングは証券会社によって異なります。
IPOに勝つ為には、各証券会社の資金拘束ルールを把握し、効率的に資金を移動・管理する事が必要不可欠です。以下の記事を参考にして、その時々に合ったIPO投資を行うようにしてくださいね。
【注意】複数単元を申し込みして一部だけ購入する事は基本的に出来ない
1つの証券会社で複数単元の申し込みをした場合、申込者が発行する単元数よりも少なければ、複数単元の購入権利を得られる事が有ります。
たとえば、あるIPOで発行する単元数が10単位で申込者が9人(7人が1単位、2人が2単位の申込)の場合、まず1単位ずつを全申込者に割り当てます。そして、残りの1単位を複数単元申込者の中から抽選で割り当てます。
人気の無いIPOや発行株数(単位数)が多いIPOでは、抽選にならない事もあるんですね(証券会社によっては抽選でも複数単元当選する事もあります)。
複数単元を申し込む際に注意しなければならないのが、購入を決定するにあたって「0」か「100」の選択肢しか無い点です。つまり、全部キャンセルするか、全部購入するかという事です。
事例の場合だと、購入権利を得た2単元のうち1単元をキャンセルして1単元を購入するという事はできません。
そのため、ブックビルディングで複数単元を申し込む際は、公募割れのリスクをしっかりと分析し、権利を得た時には全て購入する意思を固めてから申し込むようにしましょう。
ブックビルディングの価格はいくらで申し込めばよい?
ブックビルディングの申込価格は、仮条件で提示された下限値から上限値までの範囲から選びます。価格の刻み幅は、証券会社あるいはIPO銘柄によって異なり、10円刻みの時もあれば、50円・100円・・・となっている場合もあります。
では、いくらで申し込めばよいのか?という事ですが、需要申告と言われるブックビルディングですから素直に考えれば、そのIPO銘柄を購入したい価格となります。
しかし、抽選の事を考えると「上限価格」で申し込んでおくべきです。
なぜなら、申告者多数で抽選となった場合には、抽選対象が「公開価格以上でブックビルディングをした人」となるからです。
抽選対象にならなければ、当然当選する事はありません。抽選対象となるために、ブックビルディングの申込価格は「上限価格」にしておきましょう。
また、実際に「上限価格=公開価格」となっているケースがほとんどです。以下の表は直近のIPO銘柄の仮条件と公開価格を集計したものです(2018年10月19日時点)。
銘柄 | 仮条件 | 公開価格 |
---|---|---|
プリントネット | 1,360円~1,400円 | 1,400円 |
イーソル | 1,580円~1,680円 | 1,680円 |
デルタフライファーマ | 4,570円~4,770円 | 4,770円 |
CRGホールディングス | 1,020円~1,120円 | 1,120円 |
ブリッジインターナショナル | 2,090円~2,310円 | 2,310円 |
もちろん、公開価格が仮条件の上限価格とならないケースもあります。しかし、その数はかなり少ないです。
- 2018年・・・91銘柄中3銘柄(約3.3%)
- 2017年・・・90銘柄中5銘柄(約5.6%)
- 2016年・・・83銘柄中5銘柄(約6.1%)
逆にいえば、およそ95%のIPO銘柄は「公開価格=仮条件の上限価格」となる計算です。
このように、「抽選のルール」と「過去の実際のデータ」を考慮すると、ブックビルディングの申込価格は「仮条件の上限価格」としておくべきでしょう。
IPO投資では、適正価格に関係なく、ブックビルディングの申込価格を「上限価格」とする事が基本とされていますし、また何も考えずに人気の高さ・抽選対象になる事だけを考えて上限価格にする人もいます。
「需要って何なんだよ・・・」とモヤモヤする人もいると思いますが、こうした背景も需要の一側面であると割り切るしかないのではないでしょうか。
なお、こうした事を受けて、個人投資家からの申込に対しては申込価格の欄を省いている証券会社もあります(大和証券や野村證券など)。単なる抽選参加申込というシステムを取っているんですね。
ブックビルディングのストライクプライスや成行って何?指値との違いは?
一部の証券会社では、ブックビルディングの申込価格欄に「ストライクプライス」や「成行」という項目が設定されています。IPO初心者にとっては馴染みの無い言葉かもしれません。
「ストライクプライス」と「成行」は、言葉が違うだけで意味は同じです。仮条件の範囲内ならどのような公開価格でも購入する!という意思表示を意味します。つまり、指値で上限価格を入力した場合と同じ取り扱いを受けます。
IPO投資では、基本的にブックビルディングでの申込価格を「上限価格」とするので、ストライクプライス又は成行にチェックを入れれば、価格を入力する手間を省く事ができます。これはちょっとしたメリットですね。
また、仮条件の価格に変更があっても変更後の上限価格での申込として取り扱われるので、価格に関しては特に変更手続きを行う必要はありません。なお、指値で申し込んでいる場合は、変更手続きが必要です。
ストライクプライス又は成行のシステムを導入している主な証券会社は以下の通りです。
- ストライクプライス・・・SBI証券
- 成行・・・カブドットコム証券、マネックス証券
一方、さきほど出てきた「指値」についてですが、これは具体的な価格を指定して、その価格以下であれば購入するという意思表示を表します。
IPO投資のブックビルディングでは、基本的に申込価格を「上限価格」とするので、ストライクプライス又は成行が無い証券会社では、指値で上限価格を入力して申し込む事になります。
なお、申込価格を上限価格未満にしたい場合は、ストライクプライス又は成行ではなく、指値で申し込みましょう。ただし、公開価格が申込価格より高くなった場合は、抽選対象外となるので注意が必要です。
申込価格(上限値)より公開価格が低くなった場合はどっちの価格で購入するの?
さきほど紹介したように、毎年、数銘柄は上限値より低い公開価格になります。この時、上限値又は公開価格よりも高い価格でブックビルディングの申込をしていた場合は、どの価格で購入する事になるのでしょうか?
答えは、公開価格で購入!です。
公開価格とは、IPOで売り出される株の値段を意味します。つまり、公開価格で株式の売買が行われる、という事です。
そのため、公開価格よりも高い価格でブックビルディングに参加していたとしても、公開価格での購入申込となります。
「安い価格で購入できるからラッキー!」と思う人もいるかもしれません。確かにその通りなのですが、注意しなければならない点が1つあります。それが「公募割れ」です。公開価格が上限価格とならなかったIPO銘柄は、公募割れを起こす傾向が強いです。
実際に2016年及び2017年に公開価格が上限価格とはならなかった10銘柄の「公開価格」と「初値」の関係について見てみましょう。
銘柄 | 公開価格 (仮条件) | 初値 |
---|---|---|
アルヒ | 1,300円 (1,150円~1,340円) | 1,270円 |
西本Wismettac | 4,750円 (4,500円~5,250円) | 4,465円 |
LIXILビバ | 2,050円 (1,950円~2,200円) | 1,947円 |
スシロー | 3,600円 (3,600円~3,900円) | 3,430円 |
マクロミル | 1,950円 (1,900円~2,100円) | 1,867円 |
バロックジャパン | 2,000円 (2,000円~2,240円) | 1,900円 |
KHネオケム | 1,380円 (1,330円~1,670円) | 1,306円 |
ベイカレント | 2,100円 (2,100円~2,360円) | 1,963円 |
ソラスト | 1,300円 (1,270円~1,400円) | 1,222円 |
ユー・エム・シー | 3,000円 (3,000円~3,100円) | 2,480円 |
直近2年間では、公開価格が上限価格とはならなかった10銘柄全てが公募割れを起こしています。
初値売り(初値と公開価格との差額で利益を出す方法)の戦略を立てている人は、公開価格が低く設定された場合の公募割れのリスクを必ず検討するようにしてください。
「買うか・買わないか」の判断、そして買ったとしても「初値売りをするのか・保有するのか」の判断を財務分析等を基に行ってくださいね。
同一銘柄のブックビルディングを複数の証券会社から行ってもOK?
IPOは申込多数の場合には抽選が行われ、その抽選に当選しない限り、株の購入権利を得られません。そのため「なんとかして当選確率を上げたい」というのが各投資家の思いです。きっとあなたもそうなるはず。
当選確率を上げる1つの方法が「同一銘柄に対して複数の証券会社からブックビルディングを行う方法」です。
簡単に説明すると、複数の証券会社からブックビルディングを申し込む事によって、抽選回数を増やし、当選確率を高める、という算段です。
- ブックビルディングを1社だけで行う・・・抽選回数1回
- ブックビルディングを複数の証券会社で行う・・・抽選回数複数回
ただここで気になるのは「ブックビルディングを複数の証券会社から行ってもOKなの?」という点ですよね。
ブックビルディングは、本来的にはIPO銘柄の需要を調査して、公開価格を決定するために行われるものです。1社からの申込で事足りるはずです。もし同一人物が複数の証券会社からブックビルディングを行えば、集計結果にノイズが混ざってしまいます。
そう考えると、ブックビルディングは「1人1社まで」と規定されていてもおかしくありません。しかし、金融商品取引法などには、複数の証券会社からのブックビルディングの申込を禁止する規定がないんです。もちろん、罰則もありません。
つまり、複数の証券会社からブックビルディングを行ってもOKという事です。
ただし、証券会社によって重複の申込をNGとしているところがあります。もし該当する証券会社で重複して申し込んだ場合には、当選が無効になる可能性があるので注意してください。
しかしながら、多くの証券会社では重複申込をOKとしているので、NGとしている証券会社に気を付けつつ、当選確率をUPさせるために複数の証券会社からブックビルディングを申し込んでいきましょう。
ブックビルディングの取り消し・変更は可能?
「他に投資したいIPO銘柄を見つけた!」とか「申込価格や申込株数を間違えた!」など、ブックビルディングの申込後に取り消し又は変更をしたい時ってありますよね。
結論から言うと、ブックビルディングの申込期間内なら取り消し・変更が可能です。なお、申込株数又は申込価格の変更については、一旦取り消した上で、再度ブックビルディングの申込を行うのが一般的です。
逆に言えば、ブックビルディングの申込期間経過後に取り消し・変更をする事は出来ません。
ブックビルディングの期間は、前述したように約1週間とかなり短いです。そのため、投資内容の判断は、ブックビルディングの申込が開始されてからではなく、その前段階から行うようにしましょう。もし取り消し・変更が必要になったら、速やかに行動するようにしてくださいね。
【注意】ブックビルディングの申込が無効になる事も・・・その条件とは?
さきほど、重複した需要申告をNGとしている証券会社ではブックビルディングが無効になる事を紹介しましたが、その他にも以下のようにブックビルディングが無効になる場合があります。
- 上場が延期又は中止になった場合
- 仮条件の変更により申込価格が変更後の仮条件の範囲外になった場合
- 一定期間内に当選を辞退している場合 等
上場の延期・中止は不可抗力ですので、どうしようも有りません。全ての投資家のブックビルディングが無効になるのであまり気にする必要はないでしょう。
気を付けたいのは、「仮条件の変更」と「当選の辞退」です。
■仮条件の変更
仮条件の変更によって価格幅が下方修正された場合、指値によって変更前の上限価格で申し込んでいると範囲外になってしまいます。一方、上方修正された場合は、変更前の上限価格が上限ではなくなるので、無効にならないにしても抽選対象外になる可能性が出てきます。
短期間のブックビルディング期間中に仮条件の変更が行われるので、常に最新情報をキャッチアップできるようにしておく必要があります。
■当選の辞退
当選の辞退によるペナルティの有無は、証券会社によって異なります。
ペナルティが有る証券会社で当選辞退をした場合、その時点でブックビルディングに参加している他の銘柄があれば、抽選前のものについては無効というペナルティを受けます。
また当選辞退後一定期間(1ヶ月間が多い)はその証券会社でブックビルディングに参加できなくなるので、魅力的なIPOがあっても抽選機会を逃す事になってしまいます。
公募割れのリスクを回避するために、当選を辞退する事もあるかもしれませんが、その前に証券会社のペナルティの有無は確認しておくべきでしょう。
入札方式って何?~ブックビルディング以外の申告方式~
冒頭で軽く紹介した「入札方式」は、ブックビルディング以外の申告方式で以下のような特徴があります。
- 下限価格だけが設定され、入札が行われる
- 高い価格を入札した投資家から割り当てられる
- 入札価格がそのまま購入価格となる 等
このような特徴がある入札方式には、投資家の需要が株価に反映されやすいというメリットがある一方で、公開価格が高騰しやすく、また上場後にその反動で株価が暴落するというデメリットがあります。
そのため、現在、ほぼ全てのIPOにおいて入札方式ではなくブックビルディング方式が採用されています。
採用している方式はどこを見れば分かる?
証券会社のHPで採用している方式を確認できますが、それ以外に「目論見書」でも確認できます。今回は目論見書のどこを見ればよいのかについて説明しますね。
ズバリ!第一部【証券情報】の第1【募集要項】の3【募集条件】の部分です。そこに発行価格の決定方式が記載されています。ロードスターキャピタルの目論見書を例にすると、以下の画像の部分です。
(出典:SMBC日興証券)
このように該当箇所に「発行価格はブックビルディング方式によって決定したします」という文言が記載されています。一方、入札方式に関しては「該当事項はありません」と記載されており、ロードスターキャピタルのIPOはブックビルディング方式が採用されている事が分かります。
「ブックビルディング方式」か「入札方式」かをチェックするだけならここを見れば分かります。
なお、目論見書にはIPOの投資判断に資する重要な情報(財務諸表等)が記載されているので、申告方式以外もチェックするようにしてくださいね。
ブックビルディングの申込内容と当選確率に関係はある?
ここまでIPOのブックビルディングにまつわる基礎知識や細かい疑問点などについて説明してきましたが、やはり気になるのは「当選確率」との関係ではないでしょうか?IPO投資に初めて挑戦する人もゆくゆくはこの論点に行き着くと思います。
当選しなければ何も始まりませんからね。
そこでブックビルディングの「申込株数」「申込価格」及び「申込時期」と当選確率の関係について紹介したいと思います。
申込株数と当選確率
申込株数を増やせば、当選確率って上がりそうですよね。実際どうなのか?というと、証券会社によって異なります。
- ① 申込株数に比例して抽選回数が増加する証券会社(例:SBI証券・楽天証券など)
- ② 申込株数に関係なく、抽選回数は1人1回の証券会社(例:マネックス証券・カブドットコム証券など)
「①」の証券会社では申込株数を増やせば、その分当選確率が高くなります。一方、「②」の証券会社では申込株数が当選確率に影響する事はありません。しかも、抽選となれば当選するのは1人1単元のみです。複数単元の申込をする意味はありません(抽選とならなければ複数単元の当選も可能)。
つまり、IPOの当選確率を上げるには、投資資金の集中と分散がカギを握ります。具体的に言うと、複数の証券会社から申し込み、かつ申込株数に比例して抽選回数が増える証券会社に資金を集中させる事がポイントです。
このように申込株数によって当選確率が上がるかどうかは証券会社によって異なります。各証券会社の抽選方法の特徴をおさえて、少しでも当選確率が上がるように勤めていきましょう。
なお、IPO銘柄ごとに引受幹事は変わるので、なるべく多くの証券会社の口座を開設しておく必要もありますよ。
申込価格と当選確率
基本的にブックビルディングの申込価格が抽選の当選確率に影響を与える事はありません。ただし、公開価格未満の申込価格の場合、抽選対象外となるのでこの点は注意が必要です。
前述したように、抽選対象外とならないためにブックビルディングの申込価格は、指値で上限価格とするか成行・ストライクプライスを利用するようにしましょう。
申込時期と当選確率
「ブックビルディング開始すぐに申し込んだ方が当たりやすいかも・・・」とか「締め切りギリギリに申し込んだ方が当選しやすい!」などのように、ブックビルディングの申込時期と当選確率に因果関係を求める人がいるかもしれません。
しかしIPOの抽選はコンピューターによる無作為抽選ですから、ブックビルディングの申込時期が当選確率に影響を与える事はないでしょう。
ただ”験(げん)を担ぐ”という意味で、以前当選したブックビルディングの申込時期と同じ時期に申し込むのはアリかもしれませんね。
まとめ
今回はIPO投資の重要な用語「ブックビルディング」について紹介しました。論点が色々あり、かなり長い記事になってしまいました。最後まで読んでくださった読者の方は、少し疲れてしまったかもしれません。申し訳ないです。
さて最後におさらいという事で、ブックビルディングの基本部分についてまとめておきます。実際にIPOに投資する際に、ブックビルディングで分からない事があれば、また当記事に戻ってきてもらえればと思います。
- ブックビルディングはIPO投資に参加するための必須手続き(短期間なので忘れずに!)
- 申込内容は「株数」と「価格」
- 申込株数は基本1単元!ただし単元数に比例して抽選回数が増える証券会社には資金を集中!
- 価格は抽選対象外とならない為に基本「仮条件の上限値」で!(成行・ストライクプライスを利用)